掌蹠膿疱症の原因は?
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掌蹠膿疱症の悪化因子
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)の原因は、解明されていないことも多く残されていますが、喫煙、症状が感じられない程度の扁桃炎や歯周炎[病巣感染(びょうそうかんせん)]、頑固な便秘や過敏性腸症候群、金属アレルギーなどが発症に深く関わっている例が多くみられ、ストレスをきっかけに始まることが多いです。
喫煙
掌蹠膿疱症患者さんの喫煙率は70~90%と非常に高いという特徴があります1)。喫煙が掌蹠膿疱症の発症にどのように関わっているのかは不明な点が多いのですが、禁煙することで症状が軽くなったり2)、治療効果の向上がみられる傾向があり3)、喫煙が炎症物質[インターロイキン(IL)-17など]の産生を増加させたり、歯周炎など他の因子を悪化させたりなど、何らかのかたちで関わっていると考えられています。
1) 日本皮膚科学会掌蹠膿疱症診療の手引き策定委員会:掌蹠膿疱症診療の手引き2022. 日皮会誌, 132: 2055, 2022 ©日本皮膚科学会 2022
2) Michaëlsson, G., et al.: J. Am. Acad. Dermatol., 54: 737, 2006
3) 藤城幹山ほか: 日皮会誌., 125: 1775, 2015 ©日本皮膚科学会 2015
病巣感染(扁桃炎や歯周炎など)
「病巣感染(びょうそうかんせん)」とは、体のどこかに症状がほとんどない慢性の炎症がある場合、これが引き金となって体の別の部位に別の病気が引き起こされることをいいます。掌蹠膿疱症は、病巣感染が深く関わる代表的な疾患です。一部の人において、無症状の扁桃炎[病巣扁桃(びょうそうへんとう)]4)、歯の根元や周囲に潜む無症状の歯周炎[歯性病巣(しせいびょうそう)]5)、副鼻腔炎、上咽頭炎などが、掌蹠膿疱症の発症や持続につながっていると考えられています。
4) 形浦昭克.: 耳鼻臨床., 95: 763, 2002
5) 小林里実.: 皮膚臨床., 60: 1539, 2018
金属アレルギー
歯科金属などの金属アレルギーとの関連も指摘されています6)。しかし、単に歯科金属の除去だけでは良くならない例も多く、歯性病巣の治療を同時に行う場合もあります7)。
6) 石黒壽ほか.: 歯学., 88:256, 2000
7) Masui, Y., et al.: J. Eur. Acad. Dermatol. Venereol., 33: e180, 2019
膿疱が形成されるメカニズム
掌蹠膿疱症では、皮膚の中にある汗管にできた水疱に様々な「サイトカイン」が関与して、膿疱が形成されると考えられています。
膿疱が形成されるメカニズムはまだ解明されていませんが、細胞から分泌される「サイトカイン(タンパク質の一種)」という物質が関与していると考えられています。サイトカインには様々な種類があり、掌蹠膿疱症ではサイトカインの中でもインターロイキン(IL)-17、IL-23などの物質が複雑にかかわっています8,9)。
監修:社会福祉法人聖母会聖母病院 皮膚科部長 小林 里実 先生
8) Murakami, M., et al.: Exp. Dermatol., 20: 845, 2011
9) Aggarwal, S., et al.: J. Biol. Chem., 278: 1910, 2003