サマリー
■ オンライン診療の初診からの利用が始まった
■ 新型コロナウイルス感染症の拡大が収まるまでの、一時的な措置
■ 本来は対面診療後にスタートするもの。主治医と相談し適切に利用しよう
コロナ禍でニーズが高まり、オンライン診療が注目された
新型コロナウイルス感染症の拡大による緊急事態宣言下では、不要不急の外出自粛がこれまで以上に求められていました。医療機関への通院は不要不急の外出には当たりませんが、感染を恐れて病院での検査や診察をためらう人も多くいました。特に糖尿病、心不全、呼吸器疾患など基礎疾患がある場合は新型コロナウイルスによる感染症が重症化しやすいと言われており1)、基礎疾患を持つ方の中には定期受診を控えるべきかどうか、迷ったということもあったのではないでしょうか。
このような中、注目されているのが「オンライン診療」です。オンライン診療とは、情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)のうち、医師が患者さんと離れた場所からリアルタイムで診療を行うもので2)、患者さんは医療機関に行くことなく自分のスマートフォンやタブレット、パソコンなどを用いて診察を受けることができます。
診療報酬上の取り扱いと今後の運用
オンライン診療は2018年の診療報酬改定で保険適用されていましたが、対象となる疾患は限られていました3)。またオンライン診療を開始するまでに一定期間、対面診察を継続する必要があり、初診時からのオンライン診療は基本的に認められていませんでした2,3)。しかし、2020年4月10日付で厚生労働省から通達が出され、新型コロナウイルス感染症が拡大していることに鑑みた時限的・特例的な対応として、初診も含め、医師の判断で電話やオンラインによる医療相談・受診ができるようになりました4)。
また、オンライン診療で薬の処方を受けた場合、従来は郵送などで届いた処方せんを患者さんが薬局に持参し、薬剤師から服薬指導を受けた後に薬を受け取るのが原則でした。しかし、こちらも時限的・特例的にオンラインでの服薬指導が認められました4)。処方された薬剤は自宅に配送してもらうことも可能で、患者さんは医師や薬剤師と対面せず、診察から薬剤の受け取りまでできるようになったのです(図1)5)。
オンライン診療は「医師と患者さんの信頼関係」が前提に
新型コロナウイルス感染症が蔓延している時期に医療機関に出向くことは、他の病気で通院する人や医療従事者の感染リスクを高める可能性があるとされています。そのことを考えれば、オンライン診療・オンライン服薬指導の果たす役割は大きいと言えるでしょう。4月22日には政府の新型コロナウイルス感染症専門家会議から「人との接触を8割減らす、10のポイント」が示され、遠隔診療もポイントのひとつに挙げられました6)。厚生労働省でもオンライン診療についてわかりやすく説明したリーフレットを作成し、利用を呼びかけています(図2)7)。
ただし、初診時からのオンライン診療・オンライン服薬指導が認められているのは、あくまでも新型コロナウイルス感染症が蔓延している時期だけの特例措置です4)。厚生労働省が定めたオンライン診療のガイドライン『オンライン診療の適切な実施に関する指針』では、オンライン診療は、「医師が、患者から心身の状態に関する適切な情報を得るために、日頃より直接の対面診療を重ねるなど、医師-患者間で信頼関係を築いておく必要がある」ことから、「初診は、原則として直接の対面による診療を行うこと」とされています2)。 また、オンライン診療は画面越しの診察と問診のみで行われることから、対面診療に比べて医師が患者さんから得られる情報が限定されるため、患者さんが自分の症状をきちんと医師に伝えるなど、積極的に診療に協力する必要があります2)。また、オンライン診療の結果、検査等のために医療機関への来訪が指示される場合もあります。このような点も心に留め、主治医の指示のもと適切に利用することが大切です。