乾癬とは
乾癬は特徴的な皮疹の形や分布などから比較的容易に診断できます。乾癬の症状や分類についてご紹介します。
乾癬は5つの種類に分類され、乾癬の約9割は尋常性乾癬です。
乾癬の中で最も多い種類であり、全体の約9割を占めます1)。主な症状は、皮膚が赤く盛り上がる「紅斑(こうはん)」、皮膚が盛り上がる「浸潤・肥厚(しんじゅん・ひこう)」、細かいかさぶたのような「鱗屑(りんせつ)」、フケのようにボロボロとはがれ落ちる「落屑(らくせつ)」です。一般に乾癬といえば、この尋常性乾癬を指します(「乾癬とは」の項参照)。
皮疹は主に、頭皮や髪の生え際、肘、膝、腰のまわりなどに現れやすいという特徴があります。かゆみを伴う場合があります1)が、患部をごしごしこすらないようにしましょう2)(「人にうつりますか?」の項参照)。また、皮膚を乾燥させないように気をつけましょう2)。
紅斑(こうはん)
医療法人桜仁会
いがらし皮膚科東五反田 院長
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浸潤・肥厚
(しんじゅん・ひこう)
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鱗屑(りんせつ)
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関節症性乾癬といわれることもあります。関節リウマチのように関節が腫れたり、痛んだり、ときに関節の変形をきたすこともありますが、関節リウマチではありません。関節の腫れは、手や足の指の第一関節に多く見られます(指趾炎・末梢関節炎)。足裏の腱やアキレス腱の炎症が起こると、膝や股関節、肩、肘に痛みや腫れが現れることもあります(付着部炎)。骨盤にある関節や脊椎の炎症が起こると、背中や首、腰に痛みやこわばりが現れます(体軸関節炎)。その他の症状として、ほぼ1日中、疲れを感じたり、関節が熱をもったりすることもあります。乾癬性関節炎(関節症性乾癬)のチェックリストがありますので、チェックしてみましょう(「乾癬による関節の腫れや痛み」の項参照)。
乾癬だからといって、乾癬性関節炎を必ずしも発症するわけではなく、また乾癬の皮疹がひどいからといって関節症状がひどくなるわけでもありません。
多くの場合、乾癬の皮疹が出た後に関節の症状が現れてきますが、それは皮疹が出てから数ヵ月後のこともあれば、十数年後のこともあります。乾癬の患者さんで関節痛のある場合、なかでも指の関節に乾癬の症状がある場合や乾癬の爪病変もある場合は、乾癬性関節炎の可能性が高いといえます(「乾癬による関節の腫れや痛み」の項参照)。
日本では、近年、乾癬性関節炎と診断される患者さんが少しずつ増えており、乾癬全体の3〜10%程度を占めています3),4)。
指関節の腫れ
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足指の腫れ
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関節の変形
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若い人に多く、溶連菌感染(扁桃炎)の後などに、水滴ぐらいの大きさ(直径1cm程度)の小型の皮疹が、急に全身に現れます。溶連菌感染による扁桃炎が滴状乾癬の原因となっていると考えられる場合、溶連菌感染の治療によって治ることが多いのですが、慢性の病気である尋常性乾癬に移行してしまうこともあります。乾癬全体の約4%を占めます3)。
胴体(上半身)の症状
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腕の症状
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足の症状5)
尋常性乾癬の皮疹が全身に広がり、皮膚全体の80%以上が赤くなった状態をいいます。乾癬性紅皮症になると皮膚の血流量が増えるため、心拍出量が増加し心電図異常が見られます。また、皮膚から体温が奪われるため基礎代謝が亢進し、脱水や浮腫(むくみ)などの症状が見られます6)。最初から紅皮症化した状態で発症する患者さんは極めてまれで、未治療や不適切な治療、薬剤や感染症などの影響により、尋常性乾癬から乾癬性紅皮症に移行してしまう患者さんが多いようです。割合は少なく、乾癬全体の約1%を占めます3)。
中期症状
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重症例
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乾癬のうち、発熱や皮膚の発赤とともに無菌性の膿疱(うみを持った水疱)がたくさん現れる病型を膿疱性乾癬といいます7),8)。膿疱性乾癬はいくつかの病型に分類されます。膿疱性乾癬の皮疹が、体の一部だけ(手のひら、足の裏、指先など)に見られる病型や、尋常性乾癬の患者さんに一時的に膿疱を生じる病型は、限局型に分類されます7)。また、発熱、悪寒、全身倦怠感などを伴い、急激に全身の皮膚が赤くなり(紅斑)、その上に無菌性の膿疱が多数現れるvon Zumbusch型や妊娠中に膿疱がたくさん現れる疱疹状膿痂疹などの汎発性膿疱性乾癬は汎発型に分類されます7),8)。汎発性膿疱性乾癬は、放っておくと全身衰弱などにより死にいたることがあります。尋常性乾癬の経過中に生じることもあれば(尋常性乾癬の最重症型)、乾癬の症状がないのに突然生じることもあります。
治療は通常の乾癬とは異なり、入院による加療が必要です。発症頻度は非常にまれですが、難治性であることや、治療に急を要することなどから、厚生労働省難治性疾患克服研究事業の指定難病に指定されており、認定基準を満たせば医療費助成が受けられます(限局型は通常、全身症状は軽度で、一時的であるため特定疾患の対象外です8))。
広範囲の紅斑・多発性の膿疱
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いがらし皮膚科東五反田 院長
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膿疱が癒合した膿海
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参考